受賞者
第3回受賞者
プロフィール
神野 奈穂Nao Kamino
所属 | 熊本大学大学院先端科学研究部 |
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役職 | 文部科研技術支援者 |
2004年 3月 | 広島大学生物生産学部 卒業 |
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2006年 3月 | 広島大学大学院生物圏科学研究科 修士課程 修了 |
2006年 4月 | 大鵬薬品工業株式会社(~2008年8月) |
2019年11月 | 熊本大学大学院先端科学研究部 技術補佐員 |
2022年 4月 | 熊本大学大学院自然科学教育部 博士課程後期 入学 |
研究テーマ
サツマイモネコブセンチュウの根コブ形成における巨大細胞発生のメカニズムの解析
概要
植物感染性線虫による農業被害は、年間数十兆円と試算されており世界中で深刻な被害が報告されている。サツマイモネコブセンチュウが植物に感染すると、植物の細胞に様々なエフェクタータンパク質を撃ち込み、植物の発生プログラムを乗っ取ることで、自らの栄養源となる巨大細胞の形成を誘導し根こぶが作られる。このように種々の細胞の異常を引き起こすにもかかわらず、線虫による巨大細胞形成メカニズムはほとんど解明されていない。そこで本研究では巨大細胞の発生段階をたどることができるSinglegall RNAseq解析により、巨大細胞発生起源の候補とみられる複数の遺伝子を選定した。今後はこれら候補遺伝子について分子機構を解明し、根こぶへの影響を明らかにする。将来的に線虫の農業被害への解決策がみつかることを期待している。
プロフィール
田代 美空Miku Tashiro
所属 | 熊本大学大学院自然科学教育部理学専攻生物科学コース |
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役職 | 博士前期課程1年 |
2020年 4月 | 熊本大学理学部 入学 |
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2023年 3月 | 熊本大学理学部 退学 |
2023年 4月 | 熊本大学大学院自然科学教育部修士課程 進学 |
研究テーマ
ジャスモン酸依存的および非依存的なトライコーム増加メカニズムの解析
概要
植物の葉には、特殊に発達したトライコームと呼ばれる毛が生えており、昆虫に対する物理的な防御の役割をもつとされている。興味深いことに植物が昆虫や機械刺激によって傷を受けると、次に形成される葉でトライコームが増加する現象が知られている。私は、この現象から傷を受けた「記憶」が存在すると考えそれがどこまで続くのかに興味を持った。傷害シグナル伝達は、植物ホルモンの一種であるジャスモン酸(JA)によって仲介され、無傷の植物体にJAを処理するだけでもトライコームが増加する。私はこれまでにJAの作用期間を限定する実験を行い、トライコーム増加は、JA依存的な初発応答のほかにJA非依存的な持続性の記憶も関与している可能性を見出した。本研究ではこのメカニズムの詳しい解析を目的とする。将来的に農薬を使わずに昆虫から食べられにくくするため、植物自身のホルモンであるJA処理でトライコーム形成を誘導する農法への応用が期待される。
プロフィール
ツァイ イールンTsai Yi-Lun
所属 | 熊本大学 大学院先端科学研究部 生物環境農学国際研究センター |
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役職 | 助教 |
2013年 6月 | トロント大学(カナダ)Department of Cell & Systems Biology 博士課程修了 |
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2013年 1月 | ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)Department of Botany 博士研究員 |
2015年 4月 | 熊本大学 自然科学研究科 博士研究員 |
2019年 4月 | 理化学研究所 環境資源科学研究センター 基礎科学特別研究員 |
2020年10月 | 熊本大学 大学院先端科学研究部 生物環境農学国際研究センター 助教 |
研究テーマ
種皮分泌物の微生物誘引活性における生物肥料種子コーティング強化対策
概要
生物肥料とは、植物生育促進微生物(Plant growth-promoting microorganisms, PGPM)という根に感染する土壌真菌や細菌の植物への効果を利用するものです。PGPMは、低濃度でも栄養素吸収の促進等の効果があり、植物の成長を促進することから環境にやさしい肥料となっている。種子のコーティング法として「PGPM散布」が最もよく使われているが、微小な種子に使用する場合には、PGPMの生存率の低さなどの欠点がある。その技術改良のために本研究では種子表面の種皮に注目した。多くの被子植物は通称「ムシレージ」というゲル状物質を分泌する。我々は、このムシレージにネコブセンチュウの誘引活性があることを見出した。つまりこの物質は、種子と土壌微生物とコミュニケーションをするための「シグナル伝達物質」を含んでいることを確認した。本研究では、PGPMの誘引活性が強化されたムシレージ形成を目指すものである。PGPM細菌や真菌が、ムシレージに対する反応や種子表面微生物群が、ムシレージ構造における変化を明らかにしていく。本研究により種子とPGPMとの関係が明らかになると、種皮ムシレージの改良を通じて生物肥料種子コーティング技術の改良を行うことが可能となる。
プロフィール
富永 悠幹Yuuki Tominaga
所属 | 東海大学大学院生物科学研究科 |
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役職 | 生物科学専攻3年 |
2019年 3月 | 東海大学農学部バイオサイエンス学科 卒業 |
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2021年 3月 | 東海大学大学院農学研究科農学専攻修士課程 修了 |
2021年 4月 | 東海大学大学院生物科学研究科生物科学専攻博士後期課程 進学 |
2023年 4月 | 東海大学総合農学研究所 特定助手 |
研究テーマ
生活習慣病予防を目的とした脂肪細胞由来フマル酸産生を抑制する天然物の探索
概要
動脈硬化症を始めとする初期病変が自覚しにくい生活習慣病は、一度発症すると治療による完治が困難であることから、健康寿命を引き下げる大きな要因となっている。本疾患の発症・進展に伴って生体内では炎症反応が促進し、様々な代謝産物が生成される。特に、TCA 回路の中間体であるフマル酸は、高グルコース条件下で脂肪細胞から分泌されマクロファージと相互作用することで炎症反応を惹起することが報告されている(Hooftman A et al., Nature 2023)。そのため、過剰なフマル酸の産生を抑制することは、全身の慢性炎症の抑制にもつながり、生活習慣病の予防効果が期待される。本研究では、脂肪細胞を用いた高グルコース条件下におけるフマル酸の産生を阻害する天然物の探索および作用機序の特定を計画している。本研究から過剰なフマル酸の産生を抑制する天然物の同定並びにその作用機序を特定することができれば、健康寿命の延伸のみならず生活の質向上にもつながることが期待される。
プロフィール
羽根田 昌樹Masaki Haneda
所属 | 熊本大学大学院医学教育部 博士課程 代謝内科学分野専攻 |
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役職 | 博士課程4年 |
2018年 3月 | 熊本大学医学部医学科 卒業 |
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2018年 4月 | 熊本大学大学院医学教育部 博士課程 |
2021年11月 | 同上 休学 |
2023年 4月 | 同上 復学 |
研究テーマ
膵腺房細胞機能制御による非アルコール性脂肪肝炎(NAFLD)治療の模索
概要
膵外分泌細胞から放出される膵外分泌酵素の働きは、消化管内における食物の消化吸収であるが、一方で膵外分泌酵素は細胞間や循環血液中にも分泌される。我々は循環血中に膵外分泌酵素が存在する意義を見出すために、これまで取り組んできた。先行研究において、膵腺房細胞特異的にインスリン受容体を欠損させたマウスを作製し高脂肪食を負荷したところ、血清膵外分泌酵素の低下、膵体積の低下に加え、高度の脂肪肝を呈した。このことから、膵腺房細胞がなんらかの作用、臓器間crosstalkによって、脂肪肝の誘導を制御しているのではないかと考えた。本研究では、薬剤誘導性の慢性膵炎モデルマウスを作製し、膵腺房細胞の機能制御が脂肪肝炎の発症進展に寄与するのか、さらにそのメカニズムについて解明しようと考えている。本研究によって、非アルコール性脂肪肝炎(NAFLD)の新たな発症機序の解明や、新規治療法に繋がることが期待される。
※受賞者の掲載順は五十音順となります。
代表理事挨拶 要旨
ご来賓の皆様
本日はご多忙の中、当財団の3回目の表彰式にご出席いただき誠にありがとうございます。
若い時、著名なユダヤ系の学者から「日本国中の大学からの留学生と共同研究したが、いずれも研究技術は大変優れているが、originalityが不足している。」との批評をうけた事が御座います。日本の大学には今日においても、若者がオリジナリティを発揮する場が少ないと思います。ウェルシーズ財団は、成果よりも若い研究者が自由に発想し、トライしていただきたいのです。
さて、今回は9件の応募があり、そのうち3件については、審査員の満票で決まりましたが、残りの6件の研究テーマ議題については、いずれも応募された皆様の日頃の研究に対する熱意を感じる優れた研究であり、捨てがたいテーマでした。
選考委員会において、慎重な討議の結果、この中から2件について採用させていただくこととし、今年度においては合計5件を採択させていただきました。そのうち3テーマは、植物のもつ隠れた能力を引き出し、将来無農薬農業に大きく貢献する夢を与える研究で御座います。残り2テーマは習慣病予防に貢献する研究で大勢の人々が健康な老後を送れる夢を与えてくれます。
本日受賞されました5名の皆様、誠におめでとう御座います。本奨励金をご活用いただき、一層研究が進展しますことを心より祈念いたします。
簡単ですが開催のご挨拶を終わります。
来賓祝辞 要旨
受賞者の皆様、おめでとうございます。また、研究テーマに関するご発表ありがとうございます。
専門外の私が理解できるか心配でしたが、皆様、分かりやすいご説明で、研究内容の面白さに引き込まれてお聞きしました。専門的な興味にもとづく基礎研究から、将来の研究の可能性についてお聞きし、成果をお聞きするのが楽しみになりました。
基礎研究に目を向けてご支援していただく、ウェルシーズ財団様には本当に感謝いたします。
来賓祝辞 要旨
ウェルシーズ財団研究奨励金受賞、おめでとうございます。
本奨励金は、代表理事のご挨拶にもありますように「科学の世界にあって基礎研究こそが科学技術振興の礎である」という理念に基づいたもので、自由な発想を基礎研究で展開してほしいという願いか込められています。今回の内容はまさにその目的に合致した素晴らしい内容であると感じました。
これからも研究を推進し、科学の進歩に寄与していただくことを祈念いたします。
来賓祝辞 要旨
DAIZ株式会社の河野淳子と申します。本日受賞された皆様、大変おめでとうございます。
先程皆様が発表された研究課題のプレゼンテーションを「ワクワク・ドキドキ」しながら拝聴させていただき、いずれも素晴らしく、大変感銘を受けました。
DAIZ株式会社の創業者であり、現会長の「井出 剛」は、井出代表理事のご子息にあられます。井出会長は、これまで3つのベンチャーを創業されてきました。
1つ目はバイオテックの「トランスジェニック」、2つ目はアグリテックの「果実堂」、そして3つ目はフードテックの「DAIZ」、いずれも、こうした基礎研究の成果を強い熱意と行動力で事業へと結びつけられたものです。
ベーシックサイエンスは非常に地道な研究ですが、いつの日か世の中の産業に結び付くことを夢見て努力していただきたいと祈念いたします。
本日はおめでとうございました。簡単ではございますがお祝いの言葉とさせていただきます。
一般財団法人「ウェルシーズ」について
当財団は熊本県内の大学、若き基礎研究者への研究奨励金の寄附を行うことを目的として設立いたしました。
- 目的
- 若き基礎研究者への研究奨励金の寄附
- 代表理事
- 井出博之(創設者)
- 住所
- 熊本市中央区南熊本5-1-1 テルウェル熊本ビル 4F DAIZ内
- 拠出金
- 1,000万円
- 設立日
- 2021年4月1日